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その妹はたくましいのだった [play]

シアタートラムでシス・カンパニー「その妹」を観劇。
いまさら武者小路実篤かあ、と迷っていたところ、その昔(自称)文学少女だった母親が妙に乗り気なので、一緒に観ることに。
なにしろ、あらすじを読んだだけで暗い。
画家としての才能がありながら戦争で失明し、いまは小説家を目指す兄(市川亀治郎)と、彼の才能を信じて献身的に支える妹(蒼井優)。
その妹にとんでもない縁談をもってきた叔父夫婦のもとを離れ、編集者・西島(段田安則)の援助で何とか兄妹2人で暮らしはじめるものの、西島の生活も行き詰まって家庭崩壊寸前。
はたして彼らを待ち受ける運命とは――。

ところが、これが意外とおもしろかった。先入観はいけませんね。
台詞がものすごい早口で、しかも古典的女言葉「○○ですわ」の連発に最初は違和感をもったけど、たちまちなじんでしまい、だんだん耳に心地よく響くようになってくるのが不思議。
最近は会話の聞き取り能力がすっかり衰えた母でさえ、「台詞がきれいに聞こえておもしろーい」と喜んでいるくらいだもの。
登場人物は、兄といい西島といい、過酷な運命をどうすることもできないと嘆くばかりで情けないんだけども、妹のほうは「あたしって可哀想」なんて少しも考えていない。
むしろ、西島が兄の才能のためでなく自分への同情から援助することは、彼女のプライドが許さんのです。
最後にある決意をして叔父の家に行ったあと、
「私は悪いことをしたでしょうか?」
と兄に問う妹の、凛とした美しさ。
河原雅彦のテンポのいい演出と、蒼井優のきりっとした演技に、すっかり魅了されてしまった2時間半でありました。

これを機会に、実篤の原作を読んでみてもいいですわ。(←なりきり)


その妹 (1960年) (岩波文庫)

その妹 (1960年) (岩波文庫)

  • 作者: 武者小路 実篤
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1960
  • メディア: 文庫


げ。中古品12,000円て。


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気仙沼に消えた姉を追って [books]

スポーツ・ジャーナリストの生島淳氏は、気仙沼出身。
2011年3月11日、東日本を襲った巨大な津波は、彼のふるさとを、2月に亡くなったばかりの母の遺骨を、そして気仙沼に暮らす姉を家もろとも飲み込んでいった。

地震直後、無事を知らせる電話を東京の身内の家にかけていながら、なぜ逃げるという判断をしなかったのか。
そもそも数十年に一度は津波に襲われるこの町を、なぜ彼女は生涯離れようとしなかったのか。
姉の行方を探す旅は、彼女の57年の人生を追体験する旅となり、やがて気仙沼という土地が持つ豊かさを知る旅となっていく。

祖母の代から気仙沼に暮らしてきた生島家の歴史を綴るだけではなく、この震災を生き延びた水産加工品店、中学校教員、現役高校生に話を聞いていて、けっして湿っぽい内容ではない。この地で生きていこうというそれぞれの覚悟には、読んでいてすがすがしい気持ちにもなる。それでも、姉を失った著者の悲しみが行間に見え隠れして、何度も胸がつまった。

「あの日」から、もう9か月。


気仙沼に消えた姉を追って

気仙沼に消えた姉を追って

  • 作者: 生島 淳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/11
  • メディア: 単行本



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布施明「新相馬節」 [music]

ゆうべは布施明のライブに行ってきたんだけれども、今年多くの芸能人や演劇人等々がそうであったように、東日本大震災を経て今年のライブは様変わりしていた。
たとえば、例年10曲前後におよぶあのヒット曲メドレーがない、一人芝居がない、アンコールの名物だった花束&握手タイムがない。
あえて盛り上がりをつくることを避けて、そのぶん1曲1曲をより静かに、大切に歌っている感じ。

圧倒的な歌唱力は相変わらずだ。高音のバロメータである(と勝手に思っている)「君は薔薇より美しい」も、ほぼ完ぺき。ジャズも楽しかったし、締めの「マイ・ウェイ」、それにオーラスの「愛は限りなく」(ジリオラ・チンクェッティ)がまた、哀感こもっててよかったー。さすが元カンツォーネ歌手であります。

そしてなにより胸に響いたのは、福島県の民謡、「新相馬節」。
震災後、相馬の避難所を訪れるにあたり、何日も何日も聴きこんで練習していったんだけれど、「見上げてごらん夜の星を」を歌ったらみなさんがぐずぐずになって(泣いて)しまったので、結局歌えなかったんだとか。
ちなみに、「上を向いて歩こう」は歌わないように、地元の知人から前もって頼まれていたそうだ。ラストの歌詞、「一人ぼっちの夜」がNGというのがその理由。
力づけるつもりの歌が、人を悲しませることもある。言葉って、むずかしい。

帰宅してからググってみたら、YouTubeで発見。



これを聴いていると、ジャンルとか関係なく、布施さんはほんとうの「歌手」なんだなーと思う。

ライブが終わったあと、駐車場の出口で並んでいたら、目の前の楽屋口から車で出てきた布施さんとばったり。
運転席から、にっこり笑いかけてくれた。思いのほか超爽やかな笑顔で。(←失礼)
はるばる千葉県から、自分で運転して帰るんだ。お疲れさまでっす。

IMG_0946.jpg
あわててカメラを出したものの、瞬く間に人だかりが。写ったのは布施さんの車の後輪のみ・・・。(´-`) ンー


タグ:布施明 相馬
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閣下、いい味だしてます [tv]

ほぼ毎朝見ているEテレ(NHK教育)の0655
日替わりの「ねこのうた」「犬のうた」(できれば松本素生さんの歌うオスバージョン)を見ては、ふにゃーっと気持ちをやわらかくしているんだけども、ここ何週間かは「おはようソング」が楽しみでしょうがないのだ。

現在放送中の「おはようソング」は、デーモン閣下が歌う『toi toi toi!(トイトイトイ)』。

  青い空 toi toi toi
  せんたくもの toi toi toi
  となりの人 toi toi toi
  いいことが あるように

  重いかばん toi toi toi
  数学の試験 toi toi toi
  先生も toi toi toi
  しあわせ くるように

  今日の日が うまくいく
  おまじないの ことば
  toi toi toi がんばれ
  きっと きっと うまくいくよ
  (作詞:うちのますみ・佐藤雅彦)

toi toi toi とは、「ドイツに伝わる幸運のおまじないの言葉」だそうです。

番組予告によると、来週はデーモン閣下本人が出演するらしい。
まさか振りつきで歌ったりは・・・しないよね。(←でもちょっと期待w)


そのうち削除されると思うけど、YouTubeにアップされてた映像を貼っておきます。




そういえば、いつの間にか閣下の苗字、「小暮」がなくなってたのね。すっきり。




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たゆたふ故郷 [web]

日本一広い村とはいえ、行けども行けども山ばかり。鉄道も高速道路も走っていない。
緑の山肌に張りつくようにぽつんぽつんと集落があり、あるのはただ深い谷と美しい川と、
めまいのするような吊り橋がいくつか。
いちばん大きな吊り橋は、いまから50年以上前に、村人がお金を出し合って掛けたものだ。

うちの家は、いまもこの村に本籍を残している。
いままでにたった一度しか行ったことはないけれど。
訪れる人を包み込むような、あったかさと懐かしさ。
生まれるずっと前からここに縁があることが、ちょっと誇らしく思えた。

そんな村を襲った台風12号の大水害。
台風15号も刻々と近づく。
ニュースを見るばかりで、何もできないのがもどかしい。
あの親切だった役場の人たちはみな無事だろうか。

災害・復旧情報を流しつづけるツイッターを見て、こんなサイトがあることを知った。

●神納川 http://nara.utsukushiki-nippon.jp/contents/03/
●玉置神社 http://nara.utsukushiki-nippon.jp/contents/06/
●瀞峡 http://nara.utsukushiki-nippon.jp/contents/08/

奈良市出身の映画作家・河瀬直美が、映像の監督と語りを担当している。


 「玉置神社」より

この穏やかで静かな日常に、避難所で暮らす人々が一日も早くもどれますように。


タグ:十津川村
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