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気仙沼に消えた姉を追って [books]

スポーツ・ジャーナリストの生島淳氏は、気仙沼出身。
2011年3月11日、東日本を襲った巨大な津波は、彼のふるさとを、2月に亡くなったばかりの母の遺骨を、そして気仙沼に暮らす姉を家もろとも飲み込んでいった。

地震直後、無事を知らせる電話を東京の身内の家にかけていながら、なぜ逃げるという判断をしなかったのか。
そもそも数十年に一度は津波に襲われるこの町を、なぜ彼女は生涯離れようとしなかったのか。
姉の行方を探す旅は、彼女の57年の人生を追体験する旅となり、やがて気仙沼という土地が持つ豊かさを知る旅となっていく。

祖母の代から気仙沼に暮らしてきた生島家の歴史を綴るだけではなく、この震災を生き延びた水産加工品店、中学校教員、現役高校生に話を聞いていて、けっして湿っぽい内容ではない。この地で生きていこうというそれぞれの覚悟には、読んでいてすがすがしい気持ちにもなる。それでも、姉を失った著者の悲しみが行間に見え隠れして、何度も胸がつまった。

「あの日」から、もう9か月。


気仙沼に消えた姉を追って

気仙沼に消えた姉を追って

  • 作者: 生島 淳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/11
  • メディア: 単行本



カフカ『審判』とか [books]

ナイロン100℃の公演「世田谷カフカ」を観に行くので、予習のつもりでカフカの『審判』を買った。

・・・のが、今年の5月初めのこと。

まあ公演は秋だし、あとでゆっくりね、なーんて悠長に構えていたのがマズかった。
ゴミ屋敷寸前の自室を8月の夏休みに片づけていたら、積読本のいちばん下から、『審判』発掘。
すっかり忘れてたのが、ひそかにショックではあったけれども。
間に合ってよかったぁ。(冷汗

んでもって、急いで読みはじめた『審判』。これが予想外におもしろーい!

学生時代に『変身』を読んだときは、ある朝目覚めたら毒虫になっていた、という設定の突飛さに「ほぇ~」と驚き、『城』を読んだときは、いつまで経ってもハナシが進まない構造に「うーん」と唸らされた。
そのわりに、ストーリーは全然憶えていないんですけど。(>▽<;;

『審判』の主人公、銀行マンのヨーゼフ・Kは、ある朝いきなり逮捕されてしまう。
身に覚えはないし、そもそも何の罪かもわからない。でも審理は始まっていて、誰もがそのことを知っている。
最初Kは無実の罪を晴らそうと意気込んでいたのに、弁護士や役人や法廷画家やさまざまな関係者の情報に翻弄され、真相にたどり着けない。
疲労困憊したKは、もはや自分が何に向かっているのかさえわからなくなっていく。
そして、唐突で完璧なラスト。

よくコントなんかで、相手の言うことを少しずつとり違えて、どんどん話がズレていくというネタがあるけれども、『審判』にもああいうおもしろさがある。ナンセンスギャグみたいな。ギャグじゃないですが。
この作品をそのまま舞台化するわけではないにせよ、KERAならそういうカフカの喜劇的エッセンスもすくいとってくれそうな気がする。期待しよう。



すっかり調子に乗って、『失踪者』も読了。
こちらは『審判』以上に未完で、どの章が最後だかわからない。
両親の住むドイツから放逐された17歳の主人公カール・ロスマンが、居場所を求めてアメリカを転々とする。
うまくいきかけると必ず邪魔が入り、その場所を追い出されるという繰り返し。
ただ、『審判』でも『失踪者』でも、主人公はやけに女の人にモテるのだ。
これはきっとカフカも・・・。( ̄ー ̄)

現在、『城』を再読中。
むかし読んだ文庫本は残っていないので、ほかの2冊と同じ白水社のカフカ・コレクションでそろえてみた。
しかし、話の堂々巡りは想像以上だ。
3冊目ともなると集中力も途切れがちで、読んでいてもすぐに「あれ? この人だれだっけ?」。
『城』を読むこと自体が、いつまでも城に行き着けない主人公Kの様相を呈してきた。
はたしてわたしは最後のページにたどり着けるのでしょうか・・・。


審判―カフカ・コレクション (白水uブックス)

審判―カフカ・コレクション (白水uブックス)

  • 作者: フランツ カフカ
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 新書



失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス)

失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス)

  • 作者: フランツ カフカ
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 新書



城―カフカ・コレクション (白水uブックス)

城―カフカ・コレクション (白水uブックス)

  • 作者: フランツ カフカ
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 新書



タグ:ドイツ文学

引越し完了 [books]

職場が引越しをした。といっても、ほんの300メートルの距離だけど。
今日(月曜)は新事務所への初出勤日。
気がついたら旧事務所のマンションの前にいた。
ダメじゃん・・・。

ほぼ10年ぶりの引越しを前に、ここ1か月は仕事の合間を見て、ゆるゆると荷物の整理&廃棄。
最大の懸案だった大量の本の処分は、ネットで調べて古本屋に引きとってもらうことになった。

まず、情報が古かったり変色していたりして、どう見ても商品価値のない本は資源ごみに。
古本屋に送る本のうち、厳選した専門書・段ボール7箱分は、区内にある古書専門店へ。
残りの段ボール18箱分の本は、イー○○クオフに着払いで発送した。

先に査定結果が届いたのはイー○○クオフ。

なんと、総額4,000円なり・・・・・Σ( ̄⊥ ̄lll)・・・・・

約700冊のうち、500冊近くがゼロ査定。しかしありがたいことに、資源ごみとして1冊1円でお買い取りいただけるそうだ。(涙)

ちなみに、古書専門店の約200冊は3万円との査定。
こんなことなら、全部こっちの本屋に送っとけばよかったかも・・・。

本を売ったお金で豪華ディナー♪という野望むなしく、1か月間の汗とホコリの結晶である3万4千円は、事務所の引越し代となって消えたのであった。シュン。

タグ:古本 引越し

山積みの『文藝春秋』 [books]

村上春樹の「エルサレム賞」受賞スピーチ全文とインタビューが掲載されるというので、
さっそく『文藝春秋』4月号を買ってきた。


文藝春秋 2009年 04月号 [雑誌]

文藝春秋 2009年 04月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/03/10
  • メディア: 雑誌


その「僕はなぜエルサレムに行ったのか」は、全部で14ページ。
エルサレムに行くことを決めてからは親しい人からも孤立無援だったことや、
事前に送った原稿に対して事務局は、表現を変える要求を一切してこなかったこと、
彼が「壁」=systemという言葉に、シオニズムやイスラム原理主義だけではなく、
日本に根強くはびこる「正論原理主義」も重ね合わせていることなど、
スピーチにこめられた想いやその背景が見えてくる中身の濃いページだった。

……一方で、自分は安全地帯にいて正論を言い立てる人も少なくはなかったように思います。たしかに正論の積み重ねがある種の力を持つこともありますが、小説家の場合は違います。小説家が正しいことばかり言っていると、次第に言葉が力を失い、物語が枯れていきます。僕としては正論では収まりきらないものを、自分の言葉で訴えたかった。(『文藝春秋』2009年4月号、P.158)



ところで、この文章が3月10日発売の4月号に掲載されることを新聞で知り、
前日の9日に本屋とかを何軒かまわってみた。
フライングで売ってる店がないかなー、と甘いことを考えていたんだけれど。

1軒目。
レジカウンターの上に『文藝春秋』が積んである。おお!
と思ったら、3月号だった。がっくし。

2軒目。
影も形もなし。そもそも売ってるんだろうか、コンビニで。

3軒目。
入り口近くの目立つところに、『文藝春秋』が山と積んであるコーナー発見。
なになに、「芥川賞発表」~? またもや3月号だ、危ない危ない。
しかし4月号の発売前日に、この大量の3月号をどう売りさばこうというのか。
勝手な推測だけど、いまごろコレを買う客に直撃インタビューしたら、
かなりの確率で「4月号と思い込んだうっかり者」が見つかりそうな気がする。
ただ、翌日にはこれがそっくり返本の山になるわけで、
本屋さんの必死なキモチもわからなくはないけどね。


残念賞 [books]



今朝、通りがかりの本屋で買ってきた『シアターガイド』。
コラージュでつくられた武蔵と小次郎の体に、
竜也くんと小栗くんの無表情な顔が乗っかっているデザイン。
二人とも顔のテンション低すぎるぞ。
まあ、こんなふうに使われるとは思わなかったんだろうけど。
鈴木杏は星飛雄馬のお姉さんのように、木陰に佇む。
狙いはわかるんだけど、なんだかなあ。

タグ:雑誌

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